本人が診察で何も話さないことは、困っていないことと同じではありません。家族が診断をするのではなく、一緒に生活しているから気づいた変化を、本人の希望を確かめながら整理する方法を考えます。

QUICK ANSWER

家族が主治医へ相談するとき、何を伝えればいい?

病名や治療法を家族が決めるのではなく、いつから、どんな変化があり、生活へどう影響しているかを事実で整理します。本人へ共有の範囲を確認し、短いメモにしておく方法があります。

TAKEAWAYS

この記事で分かること

  • 家族が主治医へ伝えるときに整理したい5つのこと
  • 「事実」と「家族の解釈」を分ける方法
  • 本人が診察でうまく話せないことがある理由
  • 家族が話しすぎないために大切なこと
  • 診察前に使える簡単なメモの作り方

「変わりないです」と答えていた妻の記録

「診察には通っているけれど、本当に今の状態が先生に伝わっているのかな」。家族として一緒に生活していると、そう感じることがあります。

家ではほとんど動けていない。朝になると涙が出る。食事が減っている。仕事へ行く前になると苦しそうにしている。でも診察が終わって本人に聞くと、「特に変わらないって言った」ということもあります。実は、みーも長い間そうでした。

みー自身、「自分のちょっとした気分のムラを医師に話すのは迷惑なのでは」「もっと大変な人がいるから、自分はわがままなのでは」と考えていた時期がありました。だから、本人が何も話さないことと、困っていないことは同じではないのだと、僕は妻との生活から知りました。

こころの状態を言葉で伝えることは難しいため、困っていることやつらいこと、睡眠や食欲などを事前に整理しておく方法が厚生労働省からも案内されています。家族が診断をする必要はありません。この記事では、一緒に生活しているからこそ気づいた変化を、どう整理して主治医へ伝えるかを5つに分けて考えます。

本人も「何を話せばいいのか分からない」ことがある

診察室に入ったからといって、自分の状態を全部うまく説明できるとは限りません。みーも何年も通院していましたが、「調子はどうですか」と聞かれると、「変わりないです」と答えていました。

でも実際には、気持ちが沈んだり、涙が出たり、自分の感情に苦しんだりしていました。本人の記録には、「自分のちょっとした気分のムラを話すことは迷惑だと思っていた」「もっとひどい人がいるのだから、自分はわがままなのだと思っていた」という当時の気持ちも残っています。

そして後に、自傷や怒りのコントロールなど、自分自身が強く困っていることを勇気を出して医師に伝えました。そこから、医師と相談しながら自分に合う方法を考えていくきっかけになった、とみーは振り返っています。これは妻個人の体験で、薬や治療の効果を一般化するものではありません。

さっつんが感じたこと

本人がうまく説明できないことがあるからこそ、家族が本人の代わりに全部話すのではなく、本人が伝えにくい部分を一緒に整理するくらいの関わり方が大切なのだと思います。

診察で目指したい関係

「本人対家族」ではなく、本人を中心に、それぞれが持っている情報を持ち寄るイメージです。

FLOW

本人を中心に情報を持ち寄る

家族は本人の代わりに診断するのではなく、生活の中で見えた変化を補足します。

  1. 本人が感じていること

  2. 家族が生活の中で見ている変化

  3. 一緒に整理する

  4. 本人の希望を確認する

  5. 必要なことを主治医へ伝える

  6. 治療や生活について一緒に考える

主治医に伝えることは5つに整理する

全部を説明しようとすると、家族側も何を話せばいいのか分からなくなります。まずは、いつから・生活・活動・服薬後の困りごと・安全面の5つに整理してみてください。

1.いつ頃から変化があったか

「最近調子が悪いです」だけではなく、いつ頃から、どんな変化が出ているのかを整理します。正確な日付が分からなくても、「先週くらい」「ここ1か月」という整理だけでも構いません。

  • 先週ごろから朝起きるのが難しくなった
  • 3日前から涙を流すことが増えた
  • 1か月ほど前から仕事へ行く前に苦しそうにしている

2.睡眠・食事・入浴など生活の変化

こころの状態だけでなく、睡眠や食欲なども受診時に伝える情報になります。「以前と比べて何が変わったか」を見ると整理しやすくなります。

  • 夜なかなか眠れない、夜中に何度も起きる
  • 朝起きられなくなった
  • 食事量が減った
  • 入浴や着替えができない日が増えた
  • 今までできていた家事が難しくなった

3.仕事・外出など活動量の変化

次は行動の変化です。ただし、「怠けています」「やる気がありません」とは整理しません。家族の評価ではなく、実際に見た変化を書きます。

  • 仕事を休む日や遅刻が増えた
  • 外出しなくなった
  • 友達との約束を断るようになった
  • 趣味をしなくなった
  • 一日中横になっていることが増えた

「事実」と「解釈」を分ける

家族が診断をするのではなく、一緒に生活していて実際に見たことを整理します。

COMPARE

解釈ではなく、見た事実を伝える

「何が、いつから、どう変わったか」を短く整理します。

  • OPTION 1

    家族の解釈

    • やる気がありません
    • 最近わがままです
  • OPTION 2

    見た事実

    • この1週間、仕事以外はほとんど布団で過ごしています
    • 以前できていた朝の準備が、今週は4日できませんでした

4.服薬後に本人が困っていること

薬を飲んでいる場合は、「薬が効いている・効いていない」と家族が判断するのではなく、本人が実際に困っている変化を整理します。薬の変更・中断を家族だけで判断せず、主治医へ相談する材料として扱います。

  • 眠気が強いと言っている
  • 朝起きることに困っている
  • 本人が「この症状を相談したい」と言っている

5.安全面で心配していること

自分を傷つける行動、「消えたい」「死にたい」などの発言、普段と明らかに違う危険な行動など、安全面で心配していることがあれば、遠慮して隠さず、医療者へ伝えるべき重要な情報として扱ってください。

「本人が嫌がるかもしれない」「大げさかもしれない」と家族だけで判断せず、心配な状況があること自体を医療者へ相談してください。差し迫った危険がある場合は、通常の予約日を待たず、主治医・医療機関・119などへつないでください。

診察前に本人へ確認できるなら確認する

家族として気になることがあっても、本人からすると「自分の知らないところで全部話されていた」と感じることがあります。可能であれば診察前に、「最近、朝起きるのがつらそうだけど、先生に伝えてもいい?」「一緒に整理してみる?」と確認してみてください。

厚生労働省の家族向け案内でも、家族からの情報が役立つ場合がある一方、受診は本人と主治医の大切な場なので、家族が話しすぎないよう注意することが示されています。

家族は「代わりに診察を受ける人」ではない

心配だからこそ、家族が全部説明したくなることがあります。でも、診察の中心にいるのは本人です。

家族の役割は、本人より詳しく説明することではなく、本人だけでは伝えにくい生活上の変化を補足することくらいに考えておくとよいと思います。

診察前に使えるメモ

すべてをきれいな文章にする必要はありません。箇条書きで、本人自身が今日いちばん相談したいことも最後に残します。

MEMO

主治医へ伝えるメモ

書けるところだけで構いません。医療機関の方法や本人の希望に合わせて使ってください。

  1. いつから?

    例:先週ごろから

  2. 生活は?

    • 睡眠
    • 食事
    • 入浴
    • 着替え
    • 家事
  3. 活動は?

    • 仕事
    • 学校
    • 外出
    • 趣味
    • 人との交流
  4. 本人が困っていることは?

    本人の言葉をそのまま書く

  5. 安全面で気になることは?

    見聞きした事実を書く

  6. 本人が今日いちばん相談したいこと

    本人の希望を確認して書く

メモを見せてもいい

こころの状態を口頭で整理して話すことが難しい場合、伝えたいことを事前に紙へ書いておく工夫が、国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」でも案内されています。

診察室に入ると緊張して忘れてしまうこともあります。全部きれいに文章にする必要はなく、箇条書きで構いません。

「変わりないです」の奥にあるもの

僕にとって妻の記録を読んで特に印象に残ったのが、何年も診察へ通っていたのに、「変わりないです」と答え続けていたことでした。家で見ていた僕からすれば、変わっていないわけではありません。苦しそうな日も、涙が止まらない日もありました。

でも本人には、「これくらいで先生に言っていいのかな」「もっと大変な人がいる」という気持ちがありました。支える側からすると、「ちゃんと言えばいいのに」と思ってしまうかもしれません。でも、言えないことにも理由があるのだと思います。

だからこそ、「何で先生に言わなかったの?」ではなく、「次の診察で伝えたいこと、一緒に整理してみる?」と言える関係でいたいと僕は思っています。

支える人ができること

「代わりに決める」のではなく、「伝えやすくする」。それも家族にできる支え方の一つです。

FLOW

支える人ができる6つの動き

  1. 気づく

  2. 本人に聞く

  3. 一緒に整理する

  4. 本人の希望を確認する

  5. 必要なら診察に付き添う

  6. 本人だけでは伝えにくい部分を補足する

NEXT STEPS

次にできること

  1. 最近変わったことを1〜3個書く
  2. 変化がいつ頃から始まったかを思い出す
  3. 本人が困っていることを聞いてみる
  4. 本人に「先生へ伝えてもいい?」と確認する
  5. 必要ならメモを持って診察へ行く

SUMMARY

この記事のまとめ

  • 本人も自分の状態をうまく説明できないことがある
  • 家族は一緒に暮らす中で気づいた生活の変化を補足できる
  • 「やる気がない」などの解釈ではなく、実際に見た事実を整理する
  • 睡眠・食事・活動・服薬後の困りごと・安全面の5つを見る
  • 家族が全部話すのではなく、できれば本人の希望を確認する
  • 診察前にメモを作り、口頭で伝えにくいときに見せる方法もある
  • 「代わりに決める」のではなく「伝えやすくする」ことも支え方の一つ

最後に

僕も最初から、妻との関わり方が分かっていたわけではありません。「病院に通っているなら大丈夫なんじゃないか」「先生に任せておけばいいんじゃないか」「本人が先生に話せばいい」。そんなふうに考えていたこともあります。

でも一緒に生活していると、本人にしか分からないことがあります。一方で、一緒に暮らしている人だから気づけることもあります。

どちらか一方だけではなく、本人の気持ちと、家族が見ている日常の両方を大切にする。そのために家族ができる小さな支え方の一つが、「伝えたいことを一緒に整理すること」なのだと思います。

知ることで、少し見え方が変わる。見え方が変われば、選べることも少し増える。ゆるサポでは、僕たち夫婦の経験も一つの例として、これからも一緒に考えていきます。

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