「福祉の仕事って、優しい人じゃないとできない?」「コミュニケーションが得意じゃないと無理?」「自分は福祉未経験だけど、向いているのかな」。僕自身、未経験で障害福祉へ入る前は、福祉で働く人に「すごく優しい人」「人のお世話が好きな人」というイメージを持っていました。就労移行支援、就労継続支援B型、放課後等デイサービス、事業所運営やスタッフ教育を経験して感じたのは、優しさは大切でも、優しいだけでは難しい仕事だということです。この記事では、家庭と福祉現場での経験から、力を発揮しやすいかもしれない七つの姿勢を紹介します。採用基準や適性診断ではなく、人は働きながら変わるという前提でお読みください。
TAKEAWAYS
この記事で分かること
- 福祉の仕事に向いていると僕が感じる人の特徴
- 『優しい人』だけではない理由
- コミュニケーションが得意でなくてもできるのか
- 逆に苦しくなりやすい考え方
- 家族や人間関係で悩んだ経験が活かせる可能性
- 未経験からでも福祉で働けるのか
- 福祉で働きながら身につく力
最初に|『向いている・向いていない』を決めつけない
この記事のタイトルには『向いている人・向いていない人』と入っています。でも、僕は人を簡単に『あなたは向いていない』と決めることはできないと思っています。
福祉の仕事には、利用者さんと直接関わる仕事、作業を教える仕事、子どもと関わる仕事、記録、営業、請求、管理、スタッフ教育、事業所運営などがあります。同じ障害福祉でも求められる力は少しずつ違います。この記事は、福祉全体で僕が大切だと感じる姿勢として読んでください。
1.人の話を『すぐ否定せず』に聞ける人
僕が一番最初に挙げたいのは、話を聞ける人です。たくさん話せる人という意味ではありません。相手が話したとき、すぐ『でも』『普通は』『それは違う』と返さないことです。
例えば『働きたくない』という言葉にも、以前の仕事で傷ついた、体調が怖い、人間関係が不安、本当は別の仕事をしたいなど、いろいろな理由があるかもしれません。『働かないとダメ』とすぐ返さず、『どうしてそう思うんだろう』と聞くことから始めます。
COMPARE
すぐ答える前に
OPTION 1
すぐ答える
- 本人『働きたくない』
- 『働いた方がいいよ』と返す
- そこで話が終わる
OPTION 2
まず聞く
- 何が不安?
- 前の仕事で何かあった?
- 今はどうしたい?
- 背景が見え、一緒に考えられる
2.自分の『普通』を押しつけない人
自分なら朝8時に起きられる、週5日働ける、電話できる、人前で話せる。でも、それが全員にとって同じようにできるとは限りません。妻との生活でも、僕にとって簡単なことが、みーにとって難しい日がありました。
自分の『普通』を相手にも当てはめない。これは家庭でも福祉でも大切だと思っています。
自分の基準より、『その人の今』を見る
人によって、同じ行動に必要なエネルギーは違います。できる日と難しい日があることも含めて、目の前の状態を見ます。
3.分からないことを『分からない』と言える人
福祉では、制度、病気、障害、生活、仕事、年金、人間関係、家族など、本当にいろいろなことを聞かれます。全部を知っている人はいません。大切なのは、知らないことを知ったふりしないことです。
COMPARE
分からないときの二つの考え方
OPTION 1
危ない考え方
- 分からない
- 支援員だから答えないと、と思う
- 想像で答える
- 間違った情報になる可能性
OPTION 2
大切にしたい考え方
- 『確認します』と伝える
- 調べる
- 上司・専門職・関係機関に聞く
- 正確に伝える
4.相手を『変えてあげたい』と思いすぎない人
人を支える仕事をしたいという人は、優しい人が多いと思います。でも、その優しさが『この人を変えてあげたい』に変わることがあります。一般就労させたい、もっと通わせたい、もっと自立させたい、もっと話せるようにしたい。支援者には良い目標に見えても、本人が同じことを望んでいるとは限りません。
COMPARE
支援者のゴール/本人のゴール
OPTION 1
支援者から見たゴール
- 一般就労してほしい
- 週5日通ってほしい
- もっとできるようになってほしい
OPTION 2
本人が望むゴール
- 今は週2日で続けたい
- まず生活を安定させたい
- B型で働き続けたい
- 中心にするのは本人の希望
福祉は『人を自分の理想に変える仕事』ではない
支援する側は、情報を伝え、選択肢を整理し、必要なら練習し、環境を調整します。でも、最後にどんな人生を歩きたいかは本人のものです。
前の記事『病名を見ていた僕が、その人を見るようになるまで』で伝えた、『してあげる』より『一緒に考える』という姿勢につながります。
5.小さな変化を見られる人
福祉の仕事には、就職した、工賃が上がった、通所日数が増えたという分かりやすい成果があります。こうした数字は大切です。
それ以外にも、自分から挨拶した、困ったときに『助けて』と言えた、新しい作業に挑戦した、嫌なことを『嫌』と言えた、『こうしたい』と話せたという変化があります。
6.失敗したときに『相手のせい』で終わらない人
福祉の仕事では、伝えたのに伝わらない、決めたことが続かない、何度話しても同じことが起こることがあります。『本人にやる気がない』『理解力がない』で終わらせず、自分たちの支援も見直します。
COMPARE
うまくいかなかったとき
OPTION 1
相手だけを見る
- うまくいかない
- 本人に問題があると考える
- そこで終わる
OPTION 2
支援も見る
- 説明方法は?
- 環境やタイミングは?
- 目標は大きすぎない?
- 本人の希望と合っている?
- 方法を変えて、また試す
家庭でも、一回で正解にはたどり着かなかった
妻へ声をかけ、伝わらず、喧嘩し、落ち着いて話し、考え直し、また試す。僕たち夫婦もこの繰り返しでした。
福祉でも、失敗しない人より、失敗したあとに考えられる人の方が大切なのではないかと思っています。
FLOW
失敗したあとに、考え直す
声をかける
伝わらない
落ち着く
話す
考え直す
また試す
7.一人で抱えず、チームで考えられる人
福祉の仕事は一人で完結しません。同じ事業所のスタッフ、サービス管理責任者、管理者、相談支援、医療機関、家族、行政、学校、企業など、いろいろな人と関わります。自分一人ですべて解決しようとする人ほど、苦しくなることがあります。
COMPARE
一人の支援から、チームの支援へ
OPTION 1
一人で抱える
- 自分が全部考える
- 全部対応する
- 全部責任を背負う
- 疲れる
OPTION 2
チームで支える
- 本人を中心にする
- スタッフ・家族・医療・相談支援・関係機関で情報共有
- 役割を分ける
- 必要な支援を一緒に考える
ここまでの七つの特徴
僕が現場経験から、福祉で力を発揮しやすい可能性があると感じる七つの姿勢です。人を判定するための項目ではありません。
MEMO
福祉で大切にしたい七つの姿勢
1.聞く
- 人の話を、すぐ否定せず聞く
2.決めつけない
- 自分の普通を、相手へ押しつけない
3.調べる
- 分からないことを確認できる
4.本人の希望を見る
- 人を自分の思い通りに変えようとしない
5.小さな変化を見る
- 数字だけでは見えない変化にも気づく
6.振り返る
- 失敗したら自分の関わりも考え直す
7.チームで考える
- 一人で抱えず、必要な人と連携する
優しいだけではなく、その人に合う支援を一緒に考える
優しさは大切です。そのうえで、次の姿勢を組み合わせることが、本人に合う支援を一緒に考えることにつながると思っています。
OUR PRINCIPLE
福祉に向いている人を考える代表図解
これは適性診断ではなく、僕が現場で大切だと感じている姿勢です。
では、福祉に『向いていない人』は?
僕が福祉で苦しくなりやすい、または注意した方がよいと思うのは、人そのものではなく考え方です。
MEMO
自分も相手も苦しくなりやすい四つの考え方
『自分が正しい』と思いすぎる
- 制度や経験を知っていても、本人の人生の正解まで支援者が持っているわけではありません
『してあげたのに』と思いやすい
- 見返りを求める関係になっていないか振り返ります
『やる気がない』で片づける
- できない理由を考えず、性格だけに原因を求めると、支援の選択肢が減ります
全部自分で抱える
- 相談・報告・助けを求めることをせず抱え続けると、本人にもスタッフにも良い結果にならないことがあります
『やる気がない』に見える背景があるかもしれない
みー自身も、以前は自分を『嫌なことに耐えられない、わがままな自分』と思っていたと書いています。外から見ただけでは、本人にも分からない理由があることがあります。
コミュニケーションが得意じゃなくても福祉で働ける?
僕は、話すのが上手だから良い支援員になるとは限らないと思っています。人と関わる仕事なのでコミュニケーションは必要です。でも、ずっと話せることより、相手の話を聞けることの方が大切な場面もあります。沈黙を待つ、考える時間を待つ、分からなければ聞き直す。そういうコミュニケーションもあります。
COMPARE
福祉で大切にしたいコミュニケーション
OPTION 1
『コミュ力がある』のイメージ
- 話がうまい
- 盛り上げられる
- 誰とでもすぐ仲良くなる
OPTION 2
福祉で大切な関わり
- 聞く
- 待つ
- 確認する
- 分からないと言う
- 相手に合わせる
- 必要なことをチームに伝える
家族や人間関係で悩んだ経験も、活かせることがある
僕は妻との関係で、何を言えばいい、どうすればいい、なぜ伝わらないのかとかなり悩みました。正解を探し、失敗し、話し、考え直しました。
その経験だけで福祉の専門家になったわけではありません。でも、人は自分の思い通りにはならないこと、本人に聞かなければ分からないこと、正解を押しつけても関係は作れないことは、福祉の仕事でも僕の土台の一つになりました。
ただし『つらい経験がある=福祉へ行くべき』ではない
家族を支えた、自分自身が病気を経験した、人間関係で苦労した。だから福祉へ転職するべき、ではありません。そうした経験がなくても福祉で活躍できます。
未経験でも福祉で働ける?
職種や事業所によりますが、障害福祉には未経験から応募できる仕事もあります。僕自身も未経験から入りました。ただし、『資格なしで入れる=簡単な仕事』ではありません。
- 障害特性
- 制度
- 権利
- 記録
- 支援方法
- リスク管理
- 関係機関との連携
『人が好き』だけでも続かないことがある
福祉の仕事には、利用者さんと話すこと以外の仕事もあります。事業所によっては、かなり事務的な仕事もあります。『人と話すのが好き』だけで、仕事の全部をイメージしない方がいいと思います。
- 記録
- 会議
- 支援計画
- 連携
- 電話
- 送迎
- 営業
- 請求
- 制度確認
福祉の大変なところも知ってほしい
僕は福祉の仕事を素晴らしい仕事だと思っています。でも、良いところだけは書きません。人との関係なので正解がなく、感情的になる場面や安全面を考える場面があります。記録や制度があり、チーム内で意見が違うこともあり、責任もあります。
それでも僕が『素晴らしい仕事』だと思う理由
福祉では商品だけを提供しているわけではありません。安心、信頼、選択、成長、関係性。本人が『これをやってみたい』『嫌だ』『助けて』と言えたこと。そういう目に見えにくいものを、一緒に作っていく仕事でもあります。
AIの時代でも、人と関わる力は大切になると思う
AIは、記録、文章作成、情報整理、制度確認、事務などで福祉を助けてくれると思います。AIを否定せず、使えるところでは活用した方がよいと考えています。
そのうえで、本人の表情を見る、言葉になるまで待つ、『今日は何か違う』と感じる、信頼を作る、本人と一緒に迷う。こうした関わりも福祉では重要です。
COMPARE
これからの福祉で大切だと思うこと
AIと人を対立させず、両方を使える福祉を考えます。
OPTION 1
AI・技術
- 記録
- 情報整理
- 文章
- 事務
- 検索
OPTION 2
人
- 聞く
- 見る
- 待つ
- 関係を作る
- 本人と考える
- チームで動く
僕自身も、まだ学んでいる途中
未経験から福祉へ入り、今は事業所運営、スタッフ教育、制度、請求、運営指導、地域連携などに携わっています。でも、『もう福祉を全部分かった』とは思っていません。制度も、人も、状況も変わります。だから今でも、調べ、相談し、失敗し、考え直します。
福祉に興味がある人へ
この記事を読んで『自分にもできるかもしれない』と思っても、いきなり転職する必要はありません。B型、就労移行、放課後等デイサービス、A型、相談支援、生活介護など、まずはどんな仕事や場所があるのかを知るところから始められます。
SUMMARY
この記事のまとめ
- 福祉の仕事は『優しい人』だけが向いている仕事ではありません。
- 僕が大切だと思うのは、話を聞く、決めつけない、調べる、振り返る、チームで考えることです。
- 自分の普通を相手へ押しつけず、支援者の理想へ変えようとしないことを大切にします。
- 数字だけでなく、小さな変化も見ます。
- うまくいかないときは、本人だけでなく支援側も振り返ります。
- コミュニケーションは『話がうまい』だけではありません。
- 人間関係で悩み、試行錯誤した経験が福祉で活きる場合もあります。
- つらい経験があるから福祉へ行くべき、という意味ではありません。
- 未経験から始められる仕事もありますが、働きながら学ぶ必要があります。
- 福祉には大変さと責任があります。
- それでも、安心・信頼・選択・関係性など、目に見えにくい価値を一緒に作れる仕事だと思っています。
- AIと人を対立させず、両方を活用することも大切です。
- 『向いているか』だけでなく、『学んでいけるか』も大切です。
人を知ろうとし続けられること
僕が福祉業界へ入る前、自分が福祉に向いているかは考えたこともありませんでした。知識も経験もなく、特別な資格もありませんでした。ただ、妻との生活で、人との関わりについてものすごく悩んでいました。自分の正解を押しつけて失敗し、病気について調べ、妻に聞き、また失敗し、話して考え直しました。
人は自分と同じではなく、正論だけではうまくいかないことがあります。本人にしか分からないことがある。分からないなら聞く。知らないなら調べる。一人で無理なら相談する。自分が間違ったら考え直す。
福祉で一番大切なのは、最初から完璧な人であることではないと思っています。人を知ろうとし続けられること。それが、僕にとって福祉に向いている人の一番大きな特徴かもしれません。誰かとの関係で悩み、『どうしたらこの人と分かり合えるんだろう』と考えた経験も、いつか誰かを支える力になるかもしれません。知ることで、選べるようになる。福祉という仕事も、その選択肢の一つとして知ってもらえたらうれしいです。