「B型って、どんなところ?」「仕事をする場所なの?」「給料はもらえる?」「一般企業への就職を目指す場所?」。福祉業界へ入る前の僕も、就労継続支援B型がどんな場所なのか、ほとんど知りませんでした。その後、実際にB型で働き、利用者さんへの支援、事業所運営、関係機関との連携に関わりました。この記事では、制度としてのB型と、現場で感じてきたことを分けながら説明します。
TAKEAWAYS
この記事で分かること
- 就労継続支援B型とは何か、どんな人が利用するのか
- B型で行う活動と、作業以外に大切な支援
- 給料ではなく「工賃」と呼ばれる理由
- A型・就労移行支援・就労選択支援との違い
- B型から一般就労を目指す場合と、利用を続ける場合
- 事業所を選ぶときに確認したい6つのこと
- 僕がB型の現場で大切だと感じたこと
就労継続支援B型は、働き方・生活の選択肢の一つ
厚生労働省は、一般企業等に雇用されることが難しい人に、生産活動その他の活動の機会を提供し、就労に必要な知識や能力の向上等に必要な支援を行うサービスとして、就労継続支援B型を位置づけています。A型とは異なり、原則として事業所と利用者の間で雇用契約を結ぶ働き方ではありません。
働く、生活を整える、人と関わる、自信をつける、一般就労を目指す、今の生活を続ける、新しいことに挑戦する。B型を利用する目的は人によって違います。
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就労系障害福祉サービスの5つの選択肢
上から進む階段ではなく、どれが上・下という制度でもありません。本人の希望、体調、生活、必要な支援によって選択肢は異なります。
OPTION 1
就労選択支援
- 自分に合う就労先や働き方を整理
- 希望・能力・適性・必要な配慮を本人と確認
OPTION 2
就労移行支援
- 一般企業等への就職を目指す
- 準備・訓練・求職活動・職場開拓など
OPTION 3
就労継続支援A型
- 事業所と雇用契約を結ぶ
- 支援を受けながら働く機会を得る
OPTION 4
就労継続支援B型
- 原則として雇用契約を結ばない
- 生産活動等の機会と必要な支援を受ける
OPTION 5
就労定着支援
- 一般企業等へ就職した後の課題を相談
- 企業・福祉・医療等との連絡調整
B型ではどんなことをする?
活動内容は事業所によってかなり違います。B型の役割は、作業を提供することだけではありません。厚生労働省の案内でも、生産活動その他の活動の機会に加え、就労に必要な知識や能力の向上等に必要な訓練・支援が位置づけられています。
- 軽作業・梱包・組み立て
- 清掃・農作業・施設外就労
- パソコン作業・デザイン
- ハンドメイド
- お菓子・食品製造
- カフェなどでの活動
B型は「作業する場所」だけではない
B型を利用する目的は本人によって違います。全員のゴールを同じにせず、その人が今大切にしたいことから考えます。
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同じB型でも、利用する目的は違う
全員を同じゴールへ動かすのではなく、本人が望む生活や働き方を確認します。
OPTION 1
生活リズム
- まず週2日通いたい
- 決まった日に通うことから始めたい
OPTION 2
人との関わり
- スタッフや利用者と過ごしたい
- 少しずつ社会参加したい
OPTION 3
働く経験
- 自分に合う作業を探したい
- 少しずつ働く時間を増やしたい
OPTION 4
一般就労への準備
- 本人が希望するなら準備を進める
- 関係機関と必要な支援を考える
OPTION 5
B型で働き続ける
- 今の仕事や生活を続けたい
- 本人が選ぶ大切な働き方の一つ
「一般就労へ行くこと」だけを成功にしない
本人が「一般企業で働きたい」と希望するなら、その希望を一緒に考えます。一方で、支援者側が「B型から一般就労へ出すことが正解」と決めてしまうのは違うと思っています。
今の生活を安定させたい、B型で働き続けたい、体調を優先したい。そう希望しているなら、その気持ちも大切です。一般就労は選択肢の一つであり、利用する人全員が目指さなければならないわけではありません。
工賃とは?給料とは仕組みが違う
B型では原則として雇用契約を結ばず、生産活動等によって得られた収入などから利用者へ工賃が支払われます。そのため、一般的な会社員の「給与」と同じ仕組みではありません。
工賃は、仕事内容、事業所の売上や生産活動、利用時間、工賃規程などによって異なります。「B型なら月○万円もらえる」と一律には言えません。
厚生労働省が2026年3月に修正・公表した令和6年度実績では、就労継続支援B型事業所の全国平均工賃月額は24,141円でした。これは全国平均であり、本人が実際に受け取る額を示すものではありません。
僕がいたB型で、チームとして取り組んだこと
僕が関わった就労継続支援B型では、スタッフみんなで「利用者さんにとって、もっと良い事業所にするにはどうすればいいか」を考えながら取り組みました。1年間の取り組みの中で、次の変化がありました。
TEAM EXPERIENCE
我々の事業所・チームで経験した1年間の変化
さっつん一人の成果ではありません。スタッフ、利用者本人、関係機関、地域など、複数の人の取り組みが重なったチームとしての結果です。同じ結果を保証するものでもありません。
- 延べ利用者数
- 約200人 → 約400人
- 平均工賃
- 約1万円 → 約2万円
- 就労へ進んだ利用者
- 2人
- 正社員離職
- 0人
- 運営指導
- 減算なし・指導のみ
工賃を上げることも、支援も、事業を続けることも大切
工賃は、働いた結果としてお金を受け取り、欲しいものや生活に使い、自信につなげる大切なものです。そのため、工賃を上げる事業所の努力は重要だと思っています。一方で、工賃だけを追いかけ、本人の体調や希望を置き去りにするのも違います。
工賃を支払うには仕事が必要です。仕事を作るには、営業、品質、納期、売上、地域とのつながりなども考えます。事業が続かなければ支援も続きませんが、経営だけを見てもいけません。
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B型で、同時に考えたい二つの視点
福祉と経営を反対に置かず、本人の希望と、事業を続けることの両方を見ます。
OPTION 1
事業運営
- 仕事を作る
- 品質と納期を守る
- 売上を作る
- 工賃を上げる
- 事業を続ける
OPTION 2
本人への支援
- 体調と生活を見る
- 本人の希望を聞く
- 得意・苦手を整理する
- 人間関係を考える
- 将来の選択を支える
B型ではどんな職員が関わる?
事業所によって配置等は異なりますが、B型には職業指導員、生活支援員、サービス管理責任者、管理者などが関わります。この記事はB型を利用する本人向けのため、職員の仕事の詳しい説明は別の記事で扱います。
B型とA型の違い|大きな違いは雇用契約
A型とB型の大きな違いの一つが、事業所と利用者の雇用契約です。どちらが上という意味ではなく、本人の状態や希望、必要な支援によって考えます。
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A型とB型を、雇用契約から比べる
利用可否や自分に合う選択肢は、自治体や相談支援等へ個別に確認してください。
OPTION 1
就労継続支援A型
- 雇用契約:あり
- 働いた分について賃金が支払われる
- 支援を受けながら雇用契約に基づいて働く
OPTION 2
就労継続支援B型
- 雇用契約:原則なし
- 生産活動等に応じて工賃が支払われる
- 生産活動等の機会と必要な支援を受ける
B型と就労移行支援の違い|目的から比べる
就労移行支援は、一般企業等への就職へ向け、一定期間、準備や訓練、求職活動などを行います。B型は、一般企業等での雇用や雇用契約に基づく就労が難しい人に、生産活動などの機会と必要な支援を提供します。
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就労移行支援とB型を、主な方向から比べる
就労移行からB型、B型から就労移行という全員共通の正しい順番はありません。
OPTION 1
就労移行支援
- 一般企業等への就職を目指す
- 準備・訓練・求職活動を行う
- 働き続ける条件や必要な配慮を整理する
OPTION 2
就労継続支援B型
- 原則として雇用契約を結ばない
- 生産活動等の機会と必要な支援を受ける
- 利用目的は本人によって異なる
2025年から就労選択支援も始まっている
2026年現在、就労系サービスを考えるときには、2025年10月に始まった就労選択支援も知っておく必要があります。本人が自分に合った就労先や働き方を選べるよう、本人と協同して、希望、就労能力、適性、必要な配慮などを整理する支援です。
「B型とA型、どっち?」だけで考えず、まず相談し、自分の希望や働き方を整理することも重要です。B型利用前の就労選択支援の扱いは、年齢、これまでの利用状況、地域、個別事情などで異なるため、自治体や相談支援等へ確認してください。
B型を選ぶときに見てほしい6つのこと
同じB型という名前でも、仕事内容、雰囲気、考え方、支援方法はかなり違います。説明だけで決めず、見学や体験ができる場合は、実際の様子も確認します。
MEMO
見学で確認したい6つのこと
作っているものだけでなく、スタッフが利用者さんとどう話しているかも見てください。
どんな仕事をする?
- 自分が興味を持てそうか
- 作業内容と一日の流れ
工賃はどう決まる?
- 平均額だけでなく計算の仕組み
- 工賃規程と支給時期
何日・何時間から?
- 自分の体調に合うか
- 休憩や欠席時の相談方法
支援員へ相談しやすい?
- 困ったときに話せそうか
- できなかったことも伝えられそうか
何を大切にしている?
- 一般就労・工賃・生活の考え方
- 本人の希望との向き合い方
希望を聞いてくれる?
- ゴールを一方的に決めないか
- 選択肢を一緒に考えてくれるか
「工賃が高い事業所=自分に合う」とも限らない
工賃は大切です。ただ、通えないほど疲れる、作業が合わない、相談しづらい、体調が崩れるなら、本人にとって良い場所とは限りません。自分に合うペースで通え、少しずつ仕事に慣れ、本人の希望に合う事業所もあります。数字だけで決めず、自分が続けられそうかも見てください。
支援者側は「もっとできるようにしよう」と考えやすくなります。でも、できないことを本人と一緒に整理することも大切です。苦手な作業、疲れやすい時間、一人では難しいこと、あると助かる配慮が分かれば、次の選択につながります。
FLOW
「できない」で終わらせず、本人に合う方法を探す
「できることを増やす」だけではなく、難しさを分解して、本人に合う方法を探します。
難しいことに気づく
「もっと頑張る」だけで解決しようとしません。
理由を分ける
時間、作業、環境、体調、人間関係、説明方法などを確認します。
本人へ聞く
何がつらいか、どうなら取り組めそうかを本人の言葉で確認します。
必要な配慮を考える
時間、場所、手順、量、相談方法などを調整します。
合う方法を試す
一つの正解を押しつけず、本人と一緒に確かめます。
病名やサービス名より、目の前のその人を見る
僕は妻との生活でも、最初は「うつ病だからこうなんだ」と病名を見ていました。でも、同じ病名でも本人によって違い、知識だけではうまくいきませんでした。福祉の仕事でも、「精神障害だから」「B型利用者だから」ではなく、目の前のその人を見ることが支援の出発点だと思っています。
何が好きか、何が嫌か、何をしたいか、どう暮らしたいかを知る。そのためには、本人との信頼関係が必要です。
B型から一般就労へ進むことも、利用を続けることもある
本人が希望し、準備が整ってきた場合、一般就労へ進む人もいます。僕が関わった事業所でも、1年間の取り組みの中で2人が就労へ進みました。これは「B型は就職させる場所」という意味ではなく、本人が希望し、関係機関も含めて必要な支援を考えた結果です。
一方で、一般就労へ進まないことは失敗ではありません。B型で自分に合う仕事を続けたい、生活を安定させたい、人との関わりを大切にしたい。それも、本人が選んだ働き方なら大切な選択です。
家族がB型を勧めるときも、本人の希望から始める
支える人が「B型なら利用できるのでは」と思うこともあります。でも、本人の希望を確認せずに「あなたはB型がいい」と決めないでください。B型、A型、就労移行、就労選択支援、障害者雇用、一般雇用など、働き方には複数の選択肢があります。
FLOW
「B型に行く?」と決める前に考えること
支える人は選択肢を調べられますが、本人の意思を置き去りにして決めることとは違います。
何に困っている?
どう働きたい?
どれくらい働けそう?
どんな支援が必要?
相談して選択肢を知る
気になる場所を見学する
本人が選ぶ
利用を考えるときの相談先
B型を利用できるかどうかを、自分だけで判断する必要はありません。市区町村の障害福祉担当窓口、相談支援、基幹相談支援センター等、現在利用している支援機関などへ相談できます。
2025年10月に始まった就労選択支援が関係する場合もあります。対象要件、利用者負担、支給決定、利用までの流れは地域や個別状況で異なるため、2026年現在の制度について自治体等へ確認してください。
SUMMARY
この記事のまとめ
- B型は、一般企業等での雇用や雇用契約に基づく就労が難しい人に、生産活動等の機会と必要な支援を提供する障害福祉サービスです。
- A型と違い、原則として事業所と雇用契約を結びません。
- 一般的な給与とは仕組みが異なり、生産活動等に応じて工賃が支払われます。
- 仕事内容、通い方、工賃、支援方法は事業所によって異なります。
- B型を利用する目的は人によって違い、一般就労だけが全員のゴールではありません。
- 工賃は大切ですが、数字だけでなく、自分が続けられそうか、相談しやすいかも確認します。
- 僕が関わったB型では、1年間のチームの取り組みとして延べ利用者数約200人から約400人、平均工賃約1万円から約2万円などの変化がありました。
- 実績は、スタッフ・利用者本人・関係機関・地域など、複数の人の取り組みが重なったチームの成果です。
- 本人が一般就労を望む場合も、B型を続けたいと望む場合も、その希望を中心に考えます。
- 家族や支援者がゴールを決めず、「本人はどうしたい?」から始めます。
- 迷ったときは、契約を急がず、自治体への相談や事業所見学から始められます。
知ることで、本人が選べるようになる
福祉業界へ入る前の僕に見えていたB型は、作業、工賃、利用人数といった分かりやすい部分でした。現場にいると、以前より通えるようになった、相談できるようになった、自分の希望を言えるようになった、新しい仕事へ挑戦したという、数字だけでは見えない変化があります。一般就労を考えることも、「ここで働き続けたい」と自分で選ぶこともあります。
事業所として工賃を上げ、仕事を増やし、利用したいと思える場所にする努力は必要です。僕たちのチームでも改善に取り組みました。ただ、数字だけを良くすることが目的ではありません。その向こうにいる一人ひとりの生活や希望を見ることが大切です。
病名や『B型利用者』という呼び方だけでなく、目の前のその人を見る。何をしたいのかを聞く。B型が合う人、就労移行が合う人、一般就労を目指す人、今は休む人。選択肢は人によって違います。B型も、その人が知ったうえで選べる選択肢の一つです。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
- 厚生労働省「就労選択支援について」
- 厚生労働省「就労選択支援・就労系障害福祉サービスの概要」
- 厚生労働省「平均工賃(賃金)月額の実績について」
- 厚生労働省「サービスの利用手続き」
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